韓国ドラマや映画の食事シーンを見て、「韓国の食事マナーで音を立てるのは普通のことなの?」と疑問に思ったことはありませんか。
サムギョプサルやチゲなど、美味しい韓国の食文化に触れるのは旅行の大きな楽しみですが、日本との違いが分からず、知らずにマナー違反をして失敗や後悔をしたくないものです。この記事では、韓国での食事マナーに関するあなたの疑問にしっかりお答えします。
食事中に音を立てるのってどうなの?という問題や、日本でも気になるクチャラーの評判、器を持たないなら左手はどうするのか、といった具体的な作法を丁寧に解説します。
さらに、料理を少し残すのがマナーというのは本当か、やってはいけないタブー、目上の人と同席した際の乾杯のマナーやお酒の飲み方まで、知っておきたい韓国の食事マナーを網羅しました。
日本との共通点や意外な違いを理解すれば、より安心して韓国での食事を楽しめるはずです。

絶対に守らないといけないということではございませんが、「郷に入れば郷に従え」という言葉があるように、韓国旅行を楽しむために、マナーを少しでも知ってもらいたいという思いで記事にしました。
- 韓国で食事の際に音を立てることが好ましいかどうか
- 器の持ち方や箸の使い方など日本との食事マナーの違い
- 年長者と食事する際やお酒の席での注意点
- 知らずにやってしまいがちな食事中のタブー
韓国の食事マナーで音を立てるのは失礼?
- まずは基本から!韓国の食事マナーを解説
- 音を立てるのってどうなの?
- 韓国でも嫌われる?クチャラーの評判
- 器を持たない時の左手はどうする?
- おかわり自由?豊かな韓国の食文化
まずは基本から!韓国の食事マナーを解説


らくたびKOREA(イメージ)
韓国の食卓には、日本とは異なる基本的なルールが存在します。まず押さえておきたいのが、箸とスプーンの使い方です。韓国では、ステンレス製の箸(チョッカラッ)とスプーン(スッカラッ)がセットで使われます。
その理由は、それぞれの役割が明確に決まっているからです。ご飯やスープ、チゲなどの汁物はスプーンで、汁気のないおかずは箸を使って食べるのが一般的です。食事中に両方を同時に持つことはなく、どちらか一方を使い、使わない方はテーブルに置きます。
また、並べ方にも特徴があります。日本では箸を横向きに置きますが、韓国では膳の右側に、スプーンと箸を縦に揃えて置くのが正しい作法です。このとき、右側に箸、左側にスプーンを置くのが基本の形です。
食事中に箸を休める際、器の上に置く「渡し箸」は、日本と同様にマナー違反とされているので注意しましょう。
音を立てるのってどうなの?


らくたびKOREA(イメージ)
韓国の食事における音の扱いは、旅行者が最も気になるマナーの一つかもしれません。結論から言うと、韓国では食事中に意図して音を立てることは、基本的に好ましくない行為とされています。
これは、落ち着いた振る舞いを重んじ、同席者への配慮を大切にする文化的な背景が関係しています。
咀嚼音は万国共通のマナー違反
まず、口を開けたままクチャクチャと音を立てる咀嚼音は、日本と同様に韓国でも非常にマナーが悪いと見なされます。これは「クチャラー」とも呼ばれ、周囲に不快感を与える行為として広く認識されているため、親しい間柄であっても避けるのが賢明です。食事は静かに、口を閉じて楽しむことが基本となります。
日本と大きく異なる「麺類」の食べ方
日本人が特に注意したいのが、麺類を食べる際の音です。日本では、そばやラーメンを「ズズズッ」と音を立ててすすることが、風味を味わうための一つの作法として受け入れられています。しかし、この文化は韓国にはありません。
韓国では、カルグクス(韓国風うどん)や冷麺(ネンミョン)、チャジャンミョン(韓国風ジャージャー麺)といった麺料理を食べる際も、他の料理と同じようにできるだけ音を立てずに食べるのが望ましいです。
麺をスプーンに乗せて食べたり、一度に口に運ぶ量を少なくしたりして、静かに食べる工夫が見られます。特に冷麺のように麺が長い場合は、備え付けのハサミで麺を短く切ってから食べると、音を立てずに食べやすくなります。
許容される音の範囲
もちろん、全ての音を出してはいけない、というわけではありません。例えば、熱々のチゲやクッパ(スープご飯)を食べる際に、やむを得ず出てしまう小さなすする音や、スープをフーフーと冷ます音までが問題視されることは稀です。あくまで、意図的に大きな音を立てて麺をすする行為が好まれない、と理解するのが良いでしょう。
したがって、旅行者としては、基本的に音を立てないように意識して食事をする姿勢が大切です。
もし、周囲の韓国人がどのように食べているか分からなければ、少し観察してみるのも一つの方法です。



日本の食事マナーにおける「音」の感覚に近いですが、特に麺類を食べる際には、豪快にすするのではなく、静かに口に運ぶことを心掛けるだけで、よりスマートに韓国の食文化に溶け込むことができます。
韓国でも嫌われる?クチャラーの評判
前述の通り、食事中に音を立てることは韓国でも好まれませんが、中でも特に嫌われるのが「クチャラー」、つまり咀嚼音をクチャクチャと立てて食べる人です。
これは万国共通で不快に感じられる行為であり、韓国でも例外ではありません。
親しい友人や家族との間では多少大目に見られることもあるかもしれませんが、フォーマルな場や目上の方との食事では、避けるべきマナー違反です。口を閉じて静かに咀嚼することは、一緒に食事をする相手への配慮の表れと考えられています。
韓国ドラマなどで豪快に食事をするシーンが描かれることがありますが、あれはあくまで演出上の表現であることが多いです。実際の日常生活では、静かに品よく食事をすることが求められます。



旅行者であっても、この点はしっかりと意識しておくことが、お互いに気持ちよく食事を楽しむための鍵となります。
器を持たない時の左手はどうする?
韓国の食事マナーで、日本人が最も驚くことの一つが「器を手に持って食べない」という習慣です。日本ではお茶碗やお椀を手に持って食べるのが正しいマナーですが、韓国では器はテーブルに置いたまま食べるのが基本です。
この習慣の背景には、韓国で古くから使われてきたステンレス製の食器が関係しています。ステンレス製の器は熱伝導率が高く、熱いスープなどを入れると手で持てないほど熱くなるため、置いたまま食べる文化が定着したと言われています。
また、重い器を持ち上げるのは行儀が悪いという考え方も根底にあるようです。
では、器を持たない場合、左手はどうすればよいのでしょうか。正しくは、テーブルに出さずに、器の縁に軽く添えておくのが美しい所作とされています。
決してテーブルの下にだらりと下ろしたり、肘をついたりしないように気をつけましょう。この左手の使い方を意識するだけで、韓国のマナーに慣れている印象を与えることができます。
おかわり自由?豊かな韓国の食文化


らくたびKOREA(イメージ)
韓国の食堂で料理を注文すると、メインの料理以外にキムチやナムルといった小さなおかずが何皿も並べられる光景に驚いたことがあるかもしれません。これらのおかずは「パンチャン」と呼ばれ、韓国の豊かな食文化を象徴する存在です。
このパンチャンは、お客さんをたくさんの食材でもてなしたいという韓国ならではのサービス精神から来ており、多くのお店では無料でおかわりができます。おかわりが欲しい場合は、店員さんに「パンチャン チョム ト ジュセヨ(おかずをもう少しください)반찬 좀 더 주세요」と伝えれば、快く追加してくれます。
ただし、注意点もあります。近年の物価高騰の影響を受け、一部の食堂では「おかわりは1回まで」といった制限を設けたり、セルフサービス形式にしたりするケースも増えてきました。



おかわりが可能かどうかは、お店の雰囲気や周りのお客さんの様子を見て判断するのが良いでしょう。何はともあれ、多彩なパンチャンを楽しめるのは、韓国での食事の大きな魅力の一つです。
音を立てる以外に知るべき韓国の食事マナー
- 直箸はOK?日本との違いに驚くかも
- 年長者を敬う心など日本との共通点
- 少し料理を残すのがマナーって本当?
- やってはいけない食事のタブーを教えて
- 乾杯のマナーとお酒の飲み方
直箸はOK?日本との違いに驚くかも


らくたびKOREA(イメージ)
日本では大皿料理や鍋を食べる際、取り箸を使って各自の小皿に取り分けるのが一般的ですが、韓国では大きく異なります。チゲのような鍋料理や大皿のおかずを、各自が自分の箸やスプーンで直接取って食べることが、ごく当たり前に行われています。いわゆる「直箸」が基本なのです。
これは、同じ鍋を皆でつつき合うことで一体感や親密さを深めるという、共同体意識を重んじる文化の表れと考えられています。親しい間柄であればあるほど、この傾向は強まります。
このため、韓国の食堂では、そもそも取り皿が用意されていないことも珍しくありません。
ただ、この習慣にも変化が見られます。特にコロナ禍以降は衛生意識が高まり、若い世代を中心に直箸を避ける人も増えてきました。
もし気になる場合は、同席者に断りを入れたり、お店の人に「アッチョッシ ジュセヨ(取り皿ください)앞접시 주세요」とお願いしたりすると良いでしょう。状況に応じて柔軟に対応することが大切です。
年長者を敬う心など日本との共通点


らくたびKOREA(イメージ)
日本とは異なるマナーが多い韓国ですが、文化の根底に流れる精神性には共通点も見られます。その代表格が、儒教の教えに基づく「年長者を敬う」という考え方です。これは食事のマナーにも色濃く反映されています。
最も象徴的なのが、食事を始めるタイミングです。同席者の中に自分より年上の方がいる場合、必ずその方が箸やスプーンを手に取ってから食べ始めるのが絶対のルールです。
年下の者が先に食べ始めるのは、非常に失礼な行為と見なされます。
また、食事のペースを年長者に合わせることも大切です。年下は年長者より早く食べ終わってはいけませんし、逆にあまりに遅いのも失礼にあたります。
これは、相手への敬意と配慮を示すための作法であり、日本の会食の席での心遣いにも通じる部分があると言えるでしょう。



このような共通の価値観を理解しておくと、韓国の方との食事の席でもスムーズなコミュニケーションが図れます。
少し料理を残すのがマナーって本当?
「韓国では、お皿に少しだけ料理を残すのがマナー」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、半分は本当で、半分は注意が必要な情報です。
この習慣は「提供された料理をすべて平らげてしまうと、『もてなしが不十分で足りなかった』という意思表示になってしまい、かえって失礼にあたる」という考えに基づいています。
そのため、特に誰かの家に招待された場合などでは、満足したことを示すために、あえて一口分ほど残すのが良いとされてきました。これは、客に対して常に十分すぎるほどの量の食事を用意するのが最高のおもてなしである、と考える韓国の文化が背景にあります。
しかし、現代の一般的な食堂やレストランでは、この習慣はそれほど強く意識されなくなってきています。フードロス削減の観点からも、出されたものを美味しく完食することが、作り手への感謝を示すことになるという考え方も広がっています。



したがって、状況に応じて判断することが求められます。絶対に少し残さなければならない、と過度に意識する必要はないでしょう。
やってはいけない食事のタブーを教えて


器は持ち上げない(イメージ) 画像引用:韓国農水産食品流通公社
韓国で食事をする際には、良かれと思って取った行動が、意図せずマナー違反になってしまうことがあります。ここでは、特に注意したい食事のタブーを、日本との比較を交えながら詳しく解説します。
一目でわかる!日本と韓国の食事タブー比較表
まず、混乱しやすいポイントを表にまとめました。この表で大きな違いを把握しておくだけでも、多くの失敗を防げます。
タブーとされる行為 | 韓国でのマナー | 日本でのマナー | 理由・背景のポイント |
器を手に持って食べる | ❌ NG | ⭕️ OK (推奨) | 韓国では器を置いたまま食べるのが基本。ステンレス製の器が熱いことや、器を持ち上げるのが品のない行為とされるため。 |
目上の人より先に食べる | ❌ NG | ❌ NG (非推奨) | 儒教文化の影響で年長者を敬う意識が非常に強い。韓国では絶対的なルールとされる。 |
箸でご飯を食べる | ❌ NG (スプーンを使う) | ⭕️ OK | 韓国ではご飯や汁物はスプーン(スッカラッ)の役割と明確に決まっている。 |
お酒の注ぎ足し | ❌ NG | ⭕️ OK (推奨) | グラスが完全に空になってから注ぐのが礼儀。注ぎ足しは「早く飲め」という催促と見なされる。 |
渡し箸(器の上に置く) | ❌ NG | ❌ NG | 日本と同様にマナー違反。箸を休める際はテーブルの上の箸置きか、膳の右側に置く。 |
箸渡し(箸から箸へ) | ⭕️ OK | ❌ NG | 韓国には火葬の際にお骨を拾う習慣がないため、箸から箸へ食べ物を渡しても問題ない。 |
あぐら・立て膝での食事 | ⭕️ OK | ❌ NG (立て膝) | 座敷では男性はあぐら、女性は立て膝が正式な座り方。日本では行儀が悪いとされる立て膝も韓国ではOK。 |
特に注意したいタブーの詳細解説
表で挙げた項目の中から、旅行者が特に戸惑いやすいタブーについて、さらに深く掘り下げていきます。
1. 器は「絶対に」持ち上げない
前述の通り、韓国では器をテーブルに置いたまま食べるのが鉄則です。日本ではお茶碗をしっかり持って食べるのが正しい作法のため、つい癖で持ち上げてしまいそうになりますが、韓国では「物乞いのようだ」「品がない」と見られてしまうことがあります。
左手は器の縁に軽く添えるのが美しい所作です。この違いは、日韓のマナーにおける最も象徴的な相違点と言えます。
2. 年長者の優先順位は絶対
日本でも目上の人を敬いますが、韓国における年長者への敬意は、より厳格なルールとして食事の場に現れます。食事が運ばれてきても、同席している中で最も年上の方が箸やスプーンを手にするまで、他の人はじっと待たなければなりません。
これは食事の開始だけでなく、終了時やお酒の席でも同様の配慮が求められる、非常に重要なマナーです。
3. 日本ではOK、韓国ではNGな「箸渡し」の逆の現象
日本ではタブーとされる「箸渡し(箸から箸へ食べ物を渡す行為)」ですが、韓国ではマナー違反ではありません。文化的な背景が異なるため、この行為にネガティブな意味合いがないのです。
もし韓国の方から箸で食べ物を受け取ることがあっても、驚かずに文化の違いとして受け止めましょう。
逆に、日本では問題ない行為が韓国でタブーになることもあります。その代表例が「お酒の注ぎ足し」です。日本では相手のグラスを空にさせない心遣いとして行われますが、韓国では失礼にあたります。
相手への敬意を示すためにも、必ずグラスが空になったのを確認してから注ぐようにしましょう。
これらのタブーを知っておくことで、あなたは韓国の文化への理解と敬意を示すことができます。完璧にこなすことよりも、相手の文化を尊重しようとする姿勢が、最も円滑なコミュニケーションにつながる鍵となります。
乾杯のマナーとお酒の飲み方


お酒のつぎ方(イメージ) 画像引用:韓国農水産食品流通公社
韓国では、お酒の席は単なる親睦の場以上に、人間関係や礼儀を重んじる重要なコミュニケーションの場とされています。そのため、乾杯の仕方からお酒の飲み方まで、特に目上の方とご一緒する際には、敬意を示すための細かい作法が存在します。
乾杯の作法:掛け声とグラスの高さ
乾杯をする際にも、覚えておきたいマナーがいくつかあります。
まず、韓国で最も一般的な乾杯の掛け声は「건배 (コンベ)!」です。また、「위하여 (ウィハヨ)!」という掛け声もよく使われます。
これは「~のために」という意味で、「健康のために(コンガンウル ウィハヨ)」や「私たちの未来のために(ウリエ ミレルル ウィハヨ)」のように、様々な言葉と組み合わせて使われます。
そして、乾杯でグラスを合わせる際には、自分のグラスを目上の方のグラスより少し低い位置で合わせるのが礼儀です。これは相手への敬意を示すための大切な所作であり、日本のビジネスマナーにも通じるものがあります。
お酒の注ぎ方と受け方
お酒を注ぐ際は、必ず同席している年長者から先に注ぎます。右手で瓶やボトルを持ち、空いている左手を右腕の肘や手首あたりに軽く添えるのが、丁寧で正しい作法とされています。
一方、目上の方からお酒を注いでもらう際は、必ずグラスに両手を添えて、丁重に受け取ります。友人同士など、気心の知れた間柄であれば片手で注いだり受けたりすることもありますが、基本の形として覚えておくと良いでしょう。
お酒を飲む時の作法
目上の方の前でお酒を飲む姿を真正面から見せるのは、失礼にあたるとされています。そのため、杯を口に運ぶ際は、少し顔を横に向けて、口元を片手で軽く隠しながら飲むのがマナーです。このさりげない仕草が、相手への敬意の表れとなります。
注ぎ足しはNG!グラスが空いてから
日本では相手のグラスが空にならないよう、こまめに注ぎ足すのが気配りとされますが、韓国ではこの習慣はマナー違反になるため注意が必要です。
韓国では、相手のグラスが完全に空になったのを確認してから、改めてお酒を注ぐのがルールです。



グラスにお酒がまだ残っている状態で注ぐ行為は「早くそれを飲み干してください」と催促しているような、失礼な意味合いに受け取られる可能性があります。文化による大きな違いなので、しっかりと覚えておきましょう。
知れば安心!韓国の食事マナーで音を立てる問題
この記事で解説してきた、韓国の食事マナーに関する重要なポイントをまとめました。
- 韓国でも食事中に音を立てて食べるのは好ましくないとされる
- 特にクチャクチャと咀嚼音を立てる行為はマナー違反
- 麺類も音を立てずに静かに食べるのが望ましい
- ご飯や汁物はスプーン、おかずは箸で食べる
- 箸とスプーンは膳の右側に縦に揃えて置く
- 器はテーブルに置いたまま食べ、手で持ち上げない
- 器を持たない左手は、器の縁に軽く添えておく
- 食事は必ず目上の人が箸をつけてから始める
- 食事のペースは目上の人に合わせ、先に食べ終わらない
- 大皿料理や鍋は直箸で食べるのが一般的だった
- 近年は衛生意識の高まりから直箸を避ける人も増えている
- 目上の方とお酒を飲む際は、横を向いて口元を隠す
- お酒は相手のグラスが空になってから注ぎ、注ぎ足しはしない
- 「料理を少し残すのがマナー」という習慣もあるが、絶対ではない
- 渡し箸はマナー違反だが、箸から箸へ食べ物を渡す行為はタブーではない